手弱女メント

むつごとをしても一人

平成29年8月15日

起きると朝ごはんが出てくる。

1汁3菜以上が用意されて文句のつけようのない朝食だ。

そのあとシャワーを浴びて、母の車で市役所へ行った。転出届をもらった。茨城の辺鄙な町から東京都港区という大都会へ住民票を移した人間は自分が初めてではないかと得意げな気持ちになる。実際は虎の威を借る狐で、住まわしてもらう訳だけれど。恋人には俺から気持ちが離れていってしまうまでできる限り感謝を尽くしたい。

 

懐かしいホームセンターや本屋やスーパーマーケットで母と買い物をした。帰京の電車で読む為に、江國香織の東京タワーを買ってもらう。

 

母は駅の改札の外からいつまでもホームを見ていた。電車に乗るときに最後に手を振った。どんな表情をしていたのかは遠すぎてわからなかった。一番安い切符を買えばホームまで来られるということを教えてあげようかと思ったが、ともかく、こういう別れのときに表情がわからないというのは良いものだと思った。

 

江國香織の文章は心にすっと入り込む。二人の少年を知るにつれて、恋とは普遍的なものだと思った。生まれも育った環境もこの二人とは重なる部分がないけれど、かつて同じような恋わずらいを抱いていた。

 

「今度、詩史さんの高校にいってみようよ。大学でもいいけど」

「遠すぎるわ」

「高校生の私も、大学生の私も、いつも透くんの目の前にいるわ」

 

このやりとりがとてもよかった。年上の恋人と付き合うものはいつも恋人の過去を、年下の恋人はいつも恋人の未来を嫉妬するものなのだ。それが普遍的なことだ。