手弱女メント

むつごとをしても一人

秋の日

 

起き抜けに、朝勃ちしたソレを自分でしごき、彼にキスをせがみながら射精すると、決まって彼はかわいいと言う。そして俺はかわいいほど残酷な言葉はないと思う。かわいい訳があるか、こんな醜い姿が。

彼はケツが感じない。一度試みたことはあるものの、そこそこデカい俺のソレは入りそうもなかった。

そして何度か試みたことはあるものの、真性包茎の彼は挿入するときに痛みを伴うらしい。結局数秒間の結合の末、俺のケツから抜いてしまう。俺はタチもネコも出来るのに、彼はタチもネコも出来ない。

 

何度結び直しても解けてしまうマーチンの紐をまた結び直すのは今日だけで3回目だ。俺の不精を象徴するように革靴の先っちょはいつも汚れている。一部が緑色に変色したこの靴は、いわゆるマーチンは傷だらけの方がかっこいいというかっこよさとはちょっと違って見える。傷だらけでもかっこいいのは、行き届いたケアがあるからだ。それは何事につけてもそうだ。その人の生活がちゃんと目に見えて在るのに、生活感を見せない人だってそうだ。いつも俺はそんな人に憧れている。でも結局今日もマーチンの先っちょを汚したまま家を出た。昼飯は大学のコンビニで買うつもりだったが案の定の混みように嫌気がさし、徒歩五分くらいのバーガーキングに来た。顔は見たことがあるが名前を知らない程度の後輩が列に並んでいることに気づき、¥990のアボカドワッパーを頼んでしまう。これは明らかに見栄だ。取るに足らない、今後の人生で一言二言も交わさないであろう顔見知りに、俺はつまらない虚栄心を見せた。虚栄心。そうだ俺はいつも虚栄心に服を着せて歩いている。それはお洒落等とは程遠い。彼の買った彼の為の値の張るコートを着て、リュックサックを背負って、彼にもらったいい腕時計と、母に買ってもらった手入れの行き届いていないマーチンを履いて、大学に行く為だけにも虚栄心を武装しなければならない。

 

ふと気づくと彼にもらった腕時計が一時間前の時刻を指していた。

数日前酷く酔っ払って、腕時計の締め付けが煩わしくなり、外してカバンに入れたときにでもズレてしまったのだろうか。

時刻を直してまた歩き出す。手垢にまみれた、俗な、薄汚れたマーチンの紐を結び直して。